訪問看護ステーションはーと&はあとの管理者・山本です。

 この度、利用者170名で6周年を迎えられたのは、一重に利用者様・医師・ケアマネジャーなどの皆様のおかげであり、心から感謝申し上げます。これからも、"困った時に一番に思い浮かべてもらえる事業所" "困った時に最後の砦としての役割が果たせる" そんな事業所になるべく、努力をしていきます。

 私達の仕事をレストランに例えると、"どんなに接客がよくても、料理が美味しくないとリピートはない" "逆にどんなに料理が美味しくても、接客が悪いとよさが広がっていかない"と思っています。私たちにとって、料理にあたるのがケアで、接客にあたるのが連携だと思っています。

 ケアと連携の質の向上のために、管理者とリーダーを中心にOJTを実施しています。ケアが根拠に基づいて実施できているか、内容に過不足がなかったか。連携においては、報告の必要性を見極められているか、報告時は状況に応じて、電話・FAX・メールの選択が適切にできているかを、指導しています。どのスタッフが担当をしても、同じ質で「ケアと連携」が提供できるよう、サービスの均一化を目的としています。

 思っているだけでは現実は動かず、行動が伴って始めて、そこに込めた思いが輝き出すということを、スタッフ一人一人が体感していくような7年目にしていきたいです。共に働くスタッフの成長なくして、事業所の成長はありません。地域を支える訪問看護を目指して、行動していきます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

t52145_0.jpg6周年を記念して、その日に事務所へ集まることができるスタッフ11名と撮影しました。他7名が在籍しています。
訪問する時や事務所で密になる時はマスクを着用しています。

初めまして、理学療法士の矢部花乃子と申します。はーと&はあとで2023年9月より働かせていただくことになりました。

私はこれまで回復期の病院で勤務しており、主に脳血管疾患、運動器疾患、廃用症候群に対するリハビリテーションに携わってきました。病院で働いている時はリハビリをすると良くなるけれど、退院すると活動量や身体機能面が低下し、再骨折、再入院となり入退院を繰り返す方を多くみてきました。

その中で、ご自宅にあったリハビリテーションの重要性や生活環境の設定などが必要であると感じました。また、退院後の生活をサポートしたい、日常生活の動作訓練ができる訪問リハビリにとても魅力を感じ興味を持ち始めました。

訪問看護で一番大切なことは利用者様やご家族様、医師や多種職の皆さんとのコミュニケーションだと思っています。住み慣れているご自宅でより安心、安全に生活が送れるように利用者様やご家族様に寄り添い、ニーズや目標などご希望に添えるリハビリテーションができるよう努めて参りたいと思います。

また、リハビリテーションを通して利用者様自身の楽しみを見つけるきっかけを作りたいと思っています。今までの経験を活かし、日々精進して参りますので、よろしくお願い致します。

 看護師やセラピストが訪問をすると利用者様がお口や嚥下のことで困っていらっしゃる姿を拝見することがあります。

 現場でぶつかる口腔や嚥下の疑問を解消しようと寝屋川にある医療法人美和会平成歯科クリニックの院長小谷泰子先生が座談会を開催して下さいました。

 小谷先生は摂食と嚥下の専門家であり、在宅で嚥下内視鏡をして下さる数少ない先生です。今回のブログでは座談会でスタッフからあがった質問と先生からのお話の一部をご紹介します。


「よろしくお願いします。全てが解決するものではないですが、気軽に聞いて下さい。」という小谷先生のお優しいお言葉で会は和やかにスタートしました。

         座談会 訪看スタッフも。.JPG

徳井看護師からの質問:「舌苔(ぜったい)のケア方法で有効なものは何ですか?」

小谷先生:

「舌苔はベロの上についているやつですね。
舌苔の汚れって気になると思いますが、舌苔(ぜったい)の汚れは絶対(ぜったい)に取らないといけないものじゃないんです^^

茸状乳頭(じじょうにゅうとう)(舌のデコボコしてるもの)が変性して黒くなったり、消化サイクルの影響で状態が変わったりします。
やわらかい歯ブラシやウェットティッシュで軽くこすってみて、取れなければ無理に取らなくても大丈夫。そんなに悪さはしません。 

 取ってほしいのは痰、食渣(しょくさ)(食べ物の残りカス)、歯垢を取ってほしいです。
ただ、普通に口から食べている方は口も喉もそんなに汚れていません。胃瘻などつけている方は口も喉も汚れやすいので痰を取るケアをして下さい。

 あと、意外と上顎に汚れがついている方がいます。食べ物を食べる時はベロが上顎にくっつくのを繰り返してプレスをかけて食べてます。
ですが、ベロの力や嚥下が弱いと上顎に食べ物が残ります。
ベロの汚れはそんなに気にしなくていいと話しましたが、上顎に汚れがついていれば取って下さい。方法は、まず水やお茶を飲むなどして汚れをほぐしてからスポンジブラシなどで取ります。」

徳井看護師からもう一つ質問:「味覚障害の原因や治療方法はありますか?」

小谷先生:

「まず高齢者の方は鼻が悪くなると匂いがきかなくなり食べ物が美味しくなくなってしまいます。みなさん、自分の鼻をつまんでお茶を飲んでみましょう。飲み終わった後も鼻はつまんでて下さい。・・・あんまり美味しくないですよね?
例えば安いかき氷って全部同じ味なんです。同じ液に赤色をつけて匂いをイチゴにしたらイチゴ味になるし、また同じ液に青色をつけて匂いをラムネにしたらラムネ味になるんです。匂いは美味しさを感じるのに重要なんです。匂いが分からなくなると味が分からなくなります。

 味が美味しくない場合は、味を濃くして美味しさを感じやすくするのも一つの方法ですが、病気などで調味料の量に配慮が必要であれば生姜や出汁で風味をだすのが有効と言われています。
また、病気で筋力が衰えて口や舌が思うように動かせず、味そのものよりは食感や歯ごたえが原因で食べれなくなると「美味しくない」と表現することがありますし、抗がん剤の影響で味覚が変わることもあります。

食というのは楽しみ要素と栄養の要素があるので、分けて考えるといいと思います。
また、亜鉛が不足すると味覚は悪くなります。現代では亜鉛不足は考えにくいのですが、処方してもらうのはひとつの手ではあります。」

 

 理学療法士杉野からの質問:「食欲低下の原因には摂食、嚥下障害以外に歯や入歯の不具合もあると思うのですが先生の見解を教えて下さい。」

小谷先生:

「質問にある通り、歯や入歯の不具合でも食欲低下につながります。私達でも口内炎が一個できただけで食べにくくなりますし、歯が一本尖っているのがあったりする事でも影響します。ごはんの中に髪の毛一本あるだけで違和感がでるくらい口の中は繊細なものです。

 写真を撮って、針金が折れてないか、部分入歯の針金をひっかける歯が折れたり欠けたりしていないかなどの不具合を確認して、半年に一回の定期的な受診を促すのがいいです。

 あと、入歯を作りやすい人と作りにくい人がいます。プカプカの入れ歯をつけていても使いこなす人もいれば、ぴったりの入歯をつけているように見えるのに噛めない人もいます。入歯を作る時には歯科医師と相談してほしいです。

 

松元理学療法士からの質問:「むせこみやすい方の効果的なリハビリ方法はありますか?口から飲んだり食べたりするとゴホッと咳き込みます。」

小谷先生

「食べ物を食べて食道ではなく気管に入る。それが誤嚥です。誤嚥したものを出そうとする体の防御反応が咳です。喉頭を超えて声帯を超えて下の方に行っちゃうのが誤嚥、その手前の喉頭侵入で声帯の上でとどまって軽い咳で出せる方もいます。極端に言うと咳そのもの悪くないです。一番いやなのは誤嚥しても咳がでないことです。

喉.jpg

一回の咳でゴホッとしっかり出せないというのは、、、

  みなさん、猫背になって咳をしてみて下さい。 息が吸いにくくないですか?
では胸をはって咳をしてみて下さい。どうですか?息が吸いやすくなりませんか?
咳というのは声帯を閉じてたくさんの空気を一度に出すのが咳なんです。
咳は空気量が関わっています。リハビリなら呼吸リハをしたり、ただ深呼吸をするだけでも空気量が増えることがあります。 

 液体って動きが早いですよね。そうするとゴクッと飲む前に液体がさーっと流れてしまう。これが液体の誤嚥で一番多いパターンです。トロミをつける事でスピードを遅くして流れてしまうのを防ぐげますが、トロミをつけると美味しくなくなり嫌がられます。

なので、まずはひとくち量をコントロールしましょう。量を少量にします。

 ご飯を食べてる途中で、口に残った食べ物をお茶で流そうとして飲んだらむせる時は、食事の時だけお茶にトロミをつけて、普段のお茶やコーヒーにはとろみつけないという指導をすることがあります。

 リハビリに関してはご飯を食べ続けるのがリハビリそのものだったりしますね。咳は呼吸が大事になってくるかと思います。呼吸を改善するには色んなやり方がありますが、姿勢を整えてもらったり、特に年配の女性は胸を張ってもらうとか、息を吸う時に鎖骨の下や横隔膜などが膨らむように意識をしたりとか、腕を上げたりして日常生活に取り込んでもらうといいと思います。」

 

 小谷先生はスタッフからの質問にとてもわかりやすく、終始丁寧に答えて下さいました。先生は内視鏡の映像や嚥下をしてしまう瞬間の動画などを見せて下さったり、全員でお茶を猫背で飲んでみて、いかに飲みずらいかを体感できたりと、事務員の私でも目と体で嚥下について理解することできました。先生が教えて下さったことを看護師やセラピストが訪問の現場で利用者様にお届けできるようにします^^

小谷先生、ありがとうございました。

 


夏のスタートから酷暑ですね。

皆さんお元気でお過ごしでしょうか。私は暑いのが苦手で、毎年この時期に体調を崩してしまうので、睡眠と水分を十分摂って、今年こそはダウンしないようにと気を付けています。

言語聴覚士(ST:Speech-language-hearing Therapist)の事を皆さんに知って欲しくて、コミュニケーションや嚥下の話を毎回させてもらっています。今回は、以前の話で登場した失語症の訓練の一つである「PACE訓練」を紹介したいと思います。

失語症の訓練では、言語機能回復の訓練、実用的コミュニケーションの訓練、心理面や社会面の援助などを行っています。

「言語機能回復の訓練」は、「絵カードを見てその絵の名前や何をしている場面かを言う(書く)」「ことばを聴いて(読んで)何枚か並んだ絵カードの中から適する絵を選ぶ」等、一般的に言語訓練のイメージになっているのではないでしょうか。

一方で「実用的コミュニケーションの訓練」は、回復が制限される言語面に加えて、非言語的コミュニケーション手段を確保するために行います。

PACE訓練(Promoting Aphasics' Communicative Effectiveness)は、日本語で「コミュニケーション能力促進法」という実用的コミュニケーション訓練の一つです。

①新しい情報の交換
②コミュニケーション方法の自由な選択
③情報の送り手と受け手の対等な役割分担
④内容の伝達に成功したかどうかのフィードバック

といった4つの原則で訓練を行います。

まず始めに利用者様と言語聴覚士の間に、絵カードを裏返して積み重ねます。その後、利用者様とSTが交互に1枚ずつ絵カードを取り、様々な伝達手段を用いて内容を伝え合います。

絵カード.jpeg

(写真は手製カードの一部です)

私はこの「PACE訓練」が好きで、失語症の利用者様全員の訓練に取り入れています。

ことばが思うように使えなくなってしまった状態でも、コミュニケーションを取ることを諦めて欲しくない、使える手段を残らず使って少しでもコミュニケーションが取れたら、という思いで行っています。

STと利用者様で行うのはもちろんですが、ご家族がおられれば、ご家族と利用者様、他のスタッフ(看護師やセラピスト)が訪問に同行する機会があれば、スタッフと利用者様で伝え合いを経験してもらっています。

絵を見て名前がすぐ言えればそれに越したことはありませんが、失語症特有の喚語困難(わかっているのになんという名前だったかことばにできない)状態になると、初めは誰でも黙り込んでしまいます。

そこで受け手の私の出番です。「絵で描けそうですか?」「大きさを手で表せますか?」「それをどうやって使うかジェスチャーで表現してみてください」と促します。

それでもなかなか伝えられない時は、「それは食べるものですか?」「動物ですか?」等YES-NOで答えられる質問をして答えをしぼっていきます。

ことば、絵、ジェスチャー、指差し等伝達手段は何でもいいので、送り手と受け手のやり取りを繰り返しながら最終的に伝達できれば成功です。

「PACE訓練」を繰り返し行うことで、利用者様やご家族に伝達手段、伝達方法を知ってもらい、日常のコミュニケーションで少しずつでも利用してもらえたらと思っています。

先日、ことばが出にくいある利用者様との「PACE訓練」で、その利用者様は、何かを口へ入れるジェスチャーをした後、ゴクンとすぐ飲み込むまねをされました。


「食べ物ですか?」と尋ねるとYES反応。「口へ入れてすぐに飲み込んじゃいましたよね」と言うと「そうそうそれや!」とすぐ飲み込んだことが重要ポイントだという反応。

そこで私がピンと来て「薬ですか?」と言うと「そう!!」と笑顔で伝達成功の返事をして下さいました。

この利用者様は失語症の影響もあって、ことばだけでなくジェスチャーもスムーズには行いにくい方ですが、何回も「PACE訓練」を繰り返すうちに、顔の表情やぎこちないジェスチャーを組み合わせ、なんとか伝達しようと工夫できるようになってこられました。

また、ジェスチャーで表現しにくい時はすぐにノートを広げて絵に描いて伝えようとして下さいます。なかなか伝わらないこともありますが、諦めずに何回も繰り返し伝達してくださっています。

交代してSTから伝える時も、ことばだけでなく、ジェスチャーや絵を描いて伝える事に挑戦しています。ジェスチャー表現は結構難しく、絵心がない私は、絵で伝える事もかなり苦戦していて、日々利用者様と共に訓練中です。

コミュニケーションは一方的に行うものではなく、送り手と受け手の協力で成り立つキャッチボールのようなものです。送り手が伝えにくければ、受けてから積極的に質問して近づいていくこともできます。

皆さんもぜひ、周りの人とどんどんコミュニケーションを取ってみてください。自分の投げたボールが相手に届いて上手くキャッチしてもらえたら、とっても嬉しい気持ちになれますよ!

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