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低栄養の評価と原因
エネルギー必要量の考え方

回復期のリハでは、リハの内容や運動量が急性期と比べて増加するため、エネルギー必要量は多くなる。エネルギー必要量を設定する際、リハによるエネルギー消費量を考慮する。リハの強度や時間によって、100~500kcal/日以上が消費されるため、これらを考慮しなければ体重(筋肉量)は減少し、栄養状態は悪化する。さらに、低栄養患者の場合は、体重増加を目指して200~750kcal/日のエネルギー蓄積量の追加を検討する。高齢者では1kgの体重増加には、8800~22600kcal必要という報告がある。一方、肥満患者の場合は、減量を目指して200~750kcal/日エネルギー摂取量を減らす。

リハに必要なエネルギー

この分のエネルギー量を摂取しなければ、
栄養改善は認められない(あるいは栄養状態は悪化する)

メッツについて

メッツ(METs:Metabolic equivalents)は運動の強さを示す単位で、安静時(1メッツ)と比較して、何倍の運動量に相当するかを示す。メッツから運動によるエネルギー消費量を計算することができる。

エネルギー
消費量(kcal)
=1.05×体重(kg)×メッツ×時間(hr)
メッツ 身体活動
1.0 横になって静かにテレビを観る、睡眠
1.3 座って静かにする、立位で静かにする
1.5 座位:会話をする、食事をする
1.8 トイレ:座位、立位、しゃがんで排泄
2.0 整容、家の中を歩く、シャワーを浴びる
3.0 歩行(4.0km/時間、平らで固い地面)
3.5 レジスタンス運動(8~15回繰り返し)、
階段を降りる

(独)国立健康・栄養研究所改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』より
(http://www.0.nih.go.jp/eiken/programs/2011mets.pdf)

ベッドサイドでのリハ:1~3メッツ程度  機能訓練室でのリハ:1.5~6メッツ程度

※仮に体重50kgの患者が、1日3メッツ程度の理学療法と作業療法を合計3時間程度行うと、約473kcal(1.05×50×3×3)消費することになる。

エネルギー消費量の求め方

全エネルギー消費量(TEE)は、Harris-Benedictの式より算出した基礎エネルギー消費量(BEE)から、
次の式で推計することができる。

TEE(kcal)=BEE(kcal)×活動係数× ストレス係数
BEEの算出方法

Harris-Benedictの式
男性=66.47+13.75w+5.0h-6.76a
女性=655.1+9.56w+1.85h-4.68a
w:体重(kg) h:身長(cm) a:年齢(歳)

活動係数の例
寝たきり(意識障害)
:1.0
寝たきり(覚醒状態)
:1.1
ベッド上安静
:1.2
ベッドサイドリハ
:1.2~1.4
ベッド外活動
:1.3
機能訓練室でのリハ
:1.3~2.0
ストレス係数の例
飢餓状態
:0.6~1.0
術後3日間
:1.1~1.8
:(侵襲度による)
骨折
:1.1~1.3
褥瘡
:1.1~1.6
感染症
:1.1~1.5
リハにおける活動係数の例

機能訓練室にて
2~3メッツ以上のリハを

20分程度→1.3 1時間以上→1.3~1.7 2時間以上→1.5~2.0

回復期リハ病棟に入院する脳卒中患者が、良好な栄養状態を維持するために必要な平均の活動係数は、
やせ群1.7、標準群1.4、肥満群1.2という報告がある。

エネルギー必要量の一例

(例)75歳男性、体重50kg(BMI=17kg/㎡)  1日3時間、3メッツ程度のリハを実施する場合

①リハを実施しない場合の必要量(ベッド外活動あり)
②リハを実施した場合の必要量

※栄養改善を目指す場合、さらに200~750kcalを追加する

①と②の差の約500kcalがリハによるエネルギー消費量に相当する

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